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【小説】『十二人の死にたい子どもたち』感想(ネタバレなし) 映画を見るべき?小説を読むべき?

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おススメ度★★★

 

 タイトルを見れば往年の映画ファンであればおそらく映画史に残る名作『十二人の怒れる男』を頭に思い浮かべるのではないでしょうか。私も当然その一人なわけですが、この作品を読むことでより一層あの映画の凄さ・素晴らしさがわかった気がしました。というのもこの作品はタイトルを見ればわかる通り12人の登場人物が出てきますが、一斉に全キャラクターが登場してそこに主役・脇役の差がありません。よくいえば全員主役、逆に言えばだれも突出して目立たないので誰にも感情移入しないまま話が進んでいきます。『十二人の怒れる男』では陪審員の一人が中心となってストーリーが展開しましたが、この作品ではそうでは無い為12人という人数の登場人物を並列で捉えなければならず、それは結構大変な事なのだと気が付きました。物語も後半になればある程度人物像が見えてきますが、そうでない序盤は誰が誰だかよくわからないまま読み進める事になるのでストーリーがわかりにくい印象がありました。

 そう考えるとこの作品はやはり映像化した方が同じストーリーを見せるにしてもより効果的なのではないかと思います。文章だけではなかなかキャラクターを掴みづらいですが視覚で捉えることができれば話にも入りやすいでしょう。

 まあタイトルからほぼストーリーの流れはバレてるともいえますし、途中の展開からもそれは伺えるので大きな驚きは無いですが、それでもラストシーンはなかなかたのしませてもらいました。おそらく早い段階でこのラストシーンは考え出されていたんじゃないのかなと思います。

 

 それにしても沖方丁(うぶかた とう)という作家の引き出しの多さには毎回驚かされます。ギャンブラーなら是非読んでほしいギャンブルシーンが秀逸な『マルドゥック・スクランブル』は純然たるSFでてっきりSF作家だと思っていたのに『天地明察』のような時代小説を書いたり、今回はこのようなミステリーとまったくどれが本職なんでしょう。