おススメ度 ★★★★
アニメがヒットしたのはそれなりの理由があるとして、まさか映画がここまでヒットするとは誰も予想していなかったのではないでしょうか。仕掛けは確かにあったとしても、それでもともすれば日本の興行成績第1位に迫らんとする勢いを生み出しているのはいったい何なのでしょうか。
これまで日本の興行収入第1位は「千と千尋の神隠し」。そこから分かる事は何かというと、単純に映画の出来栄えの良さが興行成績を表すわけではないということです。そんなことを言ってはセンチが好きなファンからは怒られそうですが、ジブリファンの中の誰もがセンチ推しではないのではないでしょうか。おそらくストーリーの人気度からすると他の作品が上位に来ることも多いとは思いますが、そういった過去の作品に対する評価の高さが客を映画館へと運ばせ、またその内容にそれなりに納得した人たちも多くいたということなんでしょう。駄作とも言われるスター・ウォーズの最新作がそれでも興行成績では上位につけるのは、過去の作品がそれだけ凄まじい期待度を上げるにふさわしい出来栄えだったからなわけです。
さてそういったわけで興行成績にはその出来栄えよりも期待値が大きく反映されるわけですが、もちろん映画の中身も重要です。そしてこの作品の場合、それなりの前評判はあったもののおそらくその内容が引っ張ってるのであろうと想像できます。そう考えるとこの作品の一体何がすごいのか、その中身自体が重要なわけです。
原作ありの作品なので、序盤から結末までストーリーの展開はわかりきっています。これはある意味ハンデであって驚きもへったくれもありません。そんなわかりきったストーリーでありながらも観客を魅了して止まない理由が他にあるということに他なりません。
ではその理由とはいったい何なんでしょうか。
1.家族愛
おそらく最大の理由はこの作品が「家族愛」の素晴らしさについて実にうまく表現できているからではないでしょうか。単なるヲタク層のみならず幅広い層に受けている要因は、この「家族愛」というものの素晴らしさが多くの人間に響く要素だからではないでしょうか。炭治郎の「俺の家族を侮辱するな」で涙した人間は少なくないと思いますし、煉獄さんと母の下りもやはり同様の感動を与えてくれます。このヒューマンドラマの部分が映画のヒットの根幹であり、そこにフォーカスを当てた脚本は実に見事だったということではないでしょうか。
2.声優
とかく最近のアニメというとその宣伝効果のために流行りのタレントを使うことがよくみられます。おそらくその狙いを入れるのであればアニメオリジナルキャラを作ったりしてそこにあてがうというのがこれまで見られた手法です。しかしこれをやっていたならば原作レイプだとか、ファンの非難にあっていたことは容易に想像がつきます。この路線を取らないのであれば、おそらく猗窩座の声優をどうするかというところで同じ手法が使えたはずです。しかし、ここで登用されたのが石田彰さん。一般の人には何の効果も無かったでしょうが、およそアニメファンにはこのチョイスは響いた人も少なくなかったのではないでしょうか。
もちろん煉獄さん役の日野さんにしても皆すばらしかったわけですが、彼らの熱演が一要因となっていることを感じます。
3.映像の素晴らしさ
これはやはりアニメならではということになりますが、原作では描き切れなかった戦闘シーンが実にカッコよく描かれています。このあたりに時間とお金をつぎ込んだというのはプロデューサーの手腕だと思いますが、その成果が惜しみなく発揮されているのだと思います。